ニシン班の研究成果(2015年度中間報告)

ニシン班では,昨年度に引き続き内湾域(岩手県宮古湾)と汽水性湖沼域(北海道厚岸湾・厚岸湖海域)を産卵場・成育場として利用するニシンを対象として,本種の産卵場と仔稚魚の成育場の特定を目的とした野外調査を行いました。

宮古湾では2013年に湾奥西岸のアマモ場で初めてニシン卵が確認され、本種が湾奥を産卵場として利用していることがわかりました。そこで、産卵親魚はどのようなルートで湾奥西岸に向かうのか?いつまで産卵場周辺にいるのか?湾奥西岸以外にも産卵場はないのか?などを解明するために、産卵親魚に発信器(図1)を装着し、放流後の行動を追跡することにしました。発信機を用いての追跡調査は、ニシンはもちろん小型浮き魚類で初の試みです。本年2月に湾奥部の4地点に音波受信機を設置し、産卵親魚に発信器を装着して放流しました(図2、3)。しかし、今年度は親魚の来遊量がとても少なく、合計4尾に装着するにとどまりました。現在、それらから得られたデータを解析中です。引き続き次年度も本調査を行い、さらに多くの親魚に発信機を装着して放流する予定です。

 図1. ニシンに装着した発信機

2. 装着時の様子.  背鰭の前に装着しました.

 図3. 放流時の様子. 発信機を付けて泳いでいきました。

厚岸周辺海域では、2000年以降徐々に漁獲量が増加してきましたが、本年度は1970年以降最大の漁獲量になるほど多くの産卵親魚が来遊しました(図4)。したがって、近年では最も多い産卵量があったと推定されましたが、昨年に引き続き仔魚の分布調査を行ったところ、分布密度は例年と同程度という結果になりました(図5)。我々が採集している全長20 mmほどの仔魚に成長するまでに著しい減耗があったと考えられます。他の魚種でも報告されているとおり、ニシンでも親魚量(産卵量)と仔魚の発生量に正の相関関係は見られませんでした。

 図4. 厚岸市場に水揚げされたニシン.
多い日には1日で数十トンの水揚げがありました。

 図5. ニシン仔魚.

本調査によって、厚岸ニシンは仔魚期に厚岸湖内奥域を成育場に利用していることがわかってきました。また、この湖内奥域は、ニシン以外の魚も仔魚期に利用しており、調査で採集された仔魚類のうちニシンはわずか5%ほどで、残り95%がその他の仔魚という結果になりました(図6)。その他の仔魚は主にキュウリウオ科のチカ、キュウリウオ、シシャモ、シラウオ科のシラウオで、その大半はチカでした。これらの仔魚はニシン仔魚とよく似た形態(シラス型仔魚)をしており、同じ餌を捕食していると推測されます。ニシンの初期減耗要因を解明するうえで、今後はこれらの仔魚類の発生量等についても調べる必要があると考えています。

 図6. (左) 仔魚分布調査で採集された仔魚類(アルコール固定されたもの)
(右) この中からニシン仔魚を選別します. ほとんどがチカなどのニシン以外の仔魚です.

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