石垣島名蔵湾にてカニ類の日本初記録種を発見しました

石垣島名蔵湾の干潟では、海草類が周年を通じて比較的安定した藻場を形成しています。この干潟では、春になると、砂泥底に散在するサンゴ礫などを基質として小型の海藻類が繁茂しはじめます。つまり、春の短期間にのみ「海草藻場内に小さな海藻群落が混じった混生藻場」(海草海藻混生藻場)が発達するのです(図1)。このような藻場を一つの複合生態系として捉え、藻場全体の大きな季節的変化に合わせて、底生動物の種組成がどのように変化するのか、これまで調べてきました(詳細についてはこちらを参考にして下さい)

図1.石垣島名蔵湾の海草群落(左)2014年10月(右)2015年4月
 

我々は、まず海草海藻混生藻場(ハビタット)内に存在する、「海草の葉上」「林床の底質」、さらに季節的に著しく増減する「付着海藻の藻体上」の3つのマイクロハビタットを区別し、それぞれのマイクロハビタット内の動物群集の種組成を比較するために、年4回の枠取り調査を数年間にわたって行いました。

その調査の過程で、「林床の底質」内からぼこぼこした小石のような小さなカニが採集されました(図2)。見慣れないカニなので調べてみると、コブシガニ科のカルイシコブシ属Aloxの仲間であることがわかりました。ところが、さらに調べてみると、どうやらこれまでにフィリピンからしか報告がないAlox chaunosという種であることが明らかになりました。そこで、日本初記録種として「フカミゾカルイシコブシ」という和名を付けて報告しました


図2.日本初記録となったフカミゾカルイシコブシ Alox chaunos Galil & Ng, 2007
(論文に掲載された写真とは異なる写真を使用しています)

カルイシコブシ属には現在14種が含まれていますが、いずれの種もこれまで1地点からは成熟個体が数個体ずつしか採集されていませんでした。一方で、我々は年4回の採集を続けることによって、最終的に数十個体のフカミゾカルイシコブシの標本を集めることができたため、本属カニ類で成長に伴い、一部の形態的特徴が変化することが初めて明らかになりました。本研究は、名蔵湾における複合生態系にまつわる生態学的研究の「副産物」ではありますが、希少(と思われていた)種の生物学的知見を増やすことができた、ということでなかなか意義深いものであります。

関連業績:Ohtsuchi, N. and Kawamura, T. (2016)
Redescription of Alox chaunos Galil & Ng, 2007 (Crustacea: Decapoda: Brachyura: Leucosiidae) new to Japan; with notes on the male characters of A. latusoides (Sakai, 1937). Zootaxa 4111: 41-52.

名蔵湾の海草海藻混生藻場では、海草群落の林床がフカミゾカルイシコブシの主要生息場になっていると考えられる一方、海草群落内の他のマイクロハビタット(葉上や付着海藻)から本種は全く採集されませんでした。このことから、同一の海草群落内でも、林床と葉上とでは動物群集の構成種が大きく異なることが示唆されます。

(文責:大土直哉)

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