亜熱帯性藻場における動物群集の特徴: 温帯・亜寒帯性藻場とどのように異なるのか?【第1回】

藻場には大きく分けて2種類あります。アマモなどの海草類からなる「海草藻場」とコンブやテングサのような海藻類からなる「海藻藻場」です。温帯域や亜寒帯域では、一般に、異なる2種類の藻場は、それぞれ異なる場所(基質)に形成されます。海草藻場は砂泥域に、海藻藻場は岩礁域や転石帯に、といった具合です。ところが、亜熱帯域の干潟では、海草類と海藻類が混生した藻場が形成されます。私たちは、このような「混生藻場」の動物群集には、温帯域や亜寒帯域の、互いに隔てられた海草藻場・海草藻場の動物群集とは異なる特徴があるのではないかと考え、2013年から2015年まで石垣島名蔵湾で、2015年から2016年まで沖縄島金武湾で、混生藻場の調査を行いました。

2016年の冬で複合生態系プロジェクト関連の調査は終わりましたが、現在もソーティングや得られたデータの解析が進行中です。その中からいくつかのトピックを紹介いたします。

第1回 混生藻場を構成する植物群落の特徴

実際に調査をしてみると、数種の海草類からなる藻場の中には確かに多様な海藻類が混生していました。さらに、一年通して調査を行うと、混生群落の「混生の度合い」は、季節的に変化することがわかってきました(写真1)。これは、海草類と海藻類とでは季節的な消長の度合いが異なり、海草類は通年安定的に生育したのに対し、海藻類の現存量が季節によって大きく変動したためです。また、海藻類の季節消長のパターンは一様ではなく、例えば、ホンダワラ類などの大型海藻類は、季節的に消長しながらも一年中生育していましたが、イトクズグサやホソカゴメノリなどの小型海藻類は冬季から春季にかけて限定的に出現しました。この冬季から春季にかけての小型海藻類の一時的な増加は、混生藻場の動物群集の構造を明らかにするための重要な「キー」になるかもしれません。


写真1. 石垣島名蔵湾の混生群落の季節変化(左)2014年10月(右)2015年4月

我々が調査を計画した時点では、混生する小型海藻類は、海草の上に着生したもの、あるいは漂着したものだと思っていました。しかし、実際に調査を行ううちに、海藻類の多くは砂泥底に点在する大小様々のサンゴ礫を付着基質としていることがわかってきました。亜熱帯域で混生藻場が形成されるには、海草類が生育する砂泥底だけでは不十分で、海草群落内にサンゴ礫やサンゴ岩という基質が点在することによって、空間的に多様な(=混生した)藻場が形成されると考えられます。小さなスケールでみれば、亜熱帯域でも、温帯・亜寒帯域と同じように、海草と海藻は異なる基質に生育していたのです。

(文責:中本健太・大土直哉)

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