スズキ班の研究成果

スズキ班の研究成果
-内湾からエスチュアリーの複合生態系におけるスズキの初期生態―
笠井亮秀・上野正博・益田玲爾・山下洋(京大フィールド研)

複雑な初期生活史を送るスズキが、それぞれの発育段階においてなぜ異なる生態系を利用しているのか、またその初期生活史に地域による差(空間変動)はないのか、を明らかにするために、仙台湾から大阪湾にいたる複数の河川の下流域と砂浜域において、スズキ仔稚魚および餌生物のサンプリングと水温・塩分等の物理環境の観測を行った(表1)。

表1:2013年度スズキ稚魚調査概要

海域・河川名

期間

頻度

仙台湾・名取川、高城川

4月-7月

1回/月

松川浦・宇多川

5月-7月

1回/月

東京湾・多摩川

5月-7月

1回/月

伊勢湾、三河湾・矢作川、矢作古川

5月-7月

1回/月

大阪湾・淀川

3月-7月

1回/月

丹後海・由良川

12月-8月

1~4回/月

全ての海域、河川下流域において、スズキ稚魚が採集された。特に大阪湾の御前浜や甲子園浜では、3月の調査時に1曳網あたり4000個体以上の稚魚が採集されるなど、砂浜海岸生態系において明らかに優占していた。また、昨年度の調査では合計で40個体程度しか捕獲されなかった仙台湾・名取川において、今年度は1曳網あたり400個体以上の稚魚が採集される時もあった。着底間もない稚魚も多く採集されたことから、仙台湾においては卵稚仔期の産卵場から沿岸域への輸送・生残過程が両年で大きく異なったものと推定される。

現在、得られたサンプルの体長、肥満度、食性、成長などを水域間で比較し、生息環境とスズキの生態との対応を検討している。同じ月で比較すると、大阪湾、丹後海、伊勢湾などの暖水域のスズキの方が、松川浦や仙台湾などの冷水域のスズキよりも、体長が大きい傾向にあった。また大阪湾や伊勢湾では、低塩分域で採集された個体の方が、高塩分域で採集された個体よりも体長も肥満度も大きい傾向が見られた。

 

 松島湾の藻場。藻場にはスズキをはじめ多くの魚種の稚魚が集まっている。

霧中の松川浦で地引網によるサンプリングを行っている様子。

 

地引網によって採集された魚類サンプル。上がスズキ稚魚。

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