相模湾長井沿岸の小型紅藻群落の生物群集③ ~種同定~

相模湾長井沿岸では、ワカメやコンブ、ホンダワラ類の群落など「目立つ海藻群落」の周辺、もしくは林床に、テングサ類、有節サンゴモ類、無節サンゴモ類など小型紅藻類からなる海藻群落が広範に形成されます。これらの小型紅藻群落は、アワビの稚貝やサザエの稚貝にとって、重要な生息場となっています。では、アワビやサザエは、小型紅藻群落内に同居する、その他多種多様な小型生物とどのような関係にあるのでしょうか。私たちは、小型紅藻群落に生息する生物を採集するために定期的に、潜水によるモニタリング調査を行っています。本シリーズでは、採集調査では具体的にどんなことをするのか、について紹介しています。「採集調査」 「ソーティング」 に続き、今回は「種同定」について紹介します。

「分類」と「同定」、「ソーティング」と「種同定」は、しばしば調査・研究の現場において(少なくとも呼び名としては)混同されています。「分類」とは、「違いを見つけて(=分)グループを作る(=類)こと」です。「食べられるもの」と「食べられないもの」というように、我々は日常活動においても世界を分類しています。「ソーティング」というのは、こちらのアイデアに近い、と言えます。

一方、「同定」というのは,あるものとあるものが「同じ」であると決める(=定)ことです。「腐った豆」は「食べられないもの」に分類されますが、それが「納豆」と同定できれば「食べられるもの」に分類されます。このように分類には考え方によっていくつも答えが作れますが、同定には「何者であるか」という問いに対するただ一つの答えが求められます。厳密に言えば、種の同定には「ある種と同じと見なす根拠」と「その他大勢とは確実に異なる根拠」の両方が必要となります。「違いがわかる」のと「名前がわかる」というのは別の話。種同定にはある程度の習熟が必要です。

複数名で大量の生物試料の処理を行う場合には、ソーティングと種同定を別々に行うほうが効率的です。例えば、ソーティングチームが生物試料を「巻貝類、カニ類」などと大まかに分け、経験豊富な種同定チームが種名を決定します。おそらくソーティングチームのほうが早く作業が終わりますので、終わったメンバーは、種同定チームの手伝いをしながら、今後のために判別形質を教わります。長期的に持続可能で好ましい作業スタイルかと思います。

私たちのグループには、貝類と十脚甲殻類のそれぞれについて、種同定ができるメンバーがいますので、ソーティングと種同定は同時に行われることが多いのですが、折を見て学生にも判別形質を教えるようにしています。試料処理を何度も経験するうちに、学生にもソーティングと種同定が同時にできるようになり、さらに作業が効率的になっていきます。


 

カテゴリー: 相模湾   パーマリンク

コメントは受け付けていません。